足が重い。体が怠い。会社を出て家に帰るまで何千マイルも歩かなければならないような気がしてくる。暑い。初夏じみた夕日が行く手のアスファルトを不必要に温めているのが見える。延々と続くその上を否応なく歩く。重力によって路面に吸い付く足裏を嫌々持ち上げては下ろす。脇をすり抜けていく自転車。どうしてこんな、大気と地表の間を徘徊しているのかよくわからない。
長く続く道を歩き続けていたらいつかアメリカにいるかもしれない、と働かない頭が夢想する。延々と続く道はいつか乾いた風に両側が開け、そのうち「66」の看板を掲げたロードサイドのコーヒーショップが姿を見せる。70年代(70年代というのはニュアンスに過ぎない、前後十年程度、70年代だろうと思っている)から営業していそうな、最近出来た店。ひとときの喧騒を通り過ぎると、再び何もない国道に出る。目的地であるところの我が家はもうすぐだ。と思っていると、広野に突如として現れた20年代風の小さな家に辿り着く。少しだけ開いたキッチンの窓からガンボの匂いがしている。疲労に疲労を重ねて帰路を辿ってきたけれど、いつの間にかルイジアナまで来ていたのだ。ルイジアナ。なんという長い道のりであっただろうか。しかしまあ、それをやってのけたのである。そう思って、充足した気持ちで玄関ドアを叩く。夢の中で全然知らない人の家に帰ってきた時の不可解な正当性を持って。
SXSWでの上映にイライジャウッドが来ていてマジかよ〜〜となった話、ただただ楽しそうで良い。
Hania Rani@神田スクエアホール、I’ll Never Find Your Soul を生で聞けてよかった。ただオールスタンディングの意味があったのかどうかはよくわからなかったし、小島秀夫監督が「少し足が疲れた」と言っていたので次回はぜひ指定席制、保険としての椅子があればいいと思う。
今朝は新年早々コンビニのコーヒーマシンでサイズを間違って抽出するという愚行。「仕事始めだからボーッとしちゃいますよね!」と店の人に慰められるなどする。その人は親切にもカップの蓋を棚から取ってくれたのだが、これまたサイズが違っていた。仕事始めだから仕方ない。Sサイズのカップになみなみと入ったコーヒーを慎重に運びながら店を出た。
年越し蕎麦用に買った山菜の水煮がまだあったので、流用したパスタ。もう随分店のパスタを食べていない。
半年ぶりの金沢は雪のしんと冷たい街をたくさんの人で賑わっていてとても良かった。裏日本の実際はなんといっても冬にある。水分の多い雪が延々と降っては積り、積もっては緩んで凍る。鬱々とした曇天が続く。それに加えて金沢という都市は天候が目まぐるしく変わりすぎるのが面白い。新潟と金沢はよく比較の題材にされるが、金沢に比べれば新潟はもう少し天候がいいと思うし、城下町と新興の平野ではそもそもの地盤が似ていない。それでも空気感のようなものは似ている。あと金沢には大和があるのが新潟市民的に郷愁を誘う(富山にもあるらしいが)。
東京に戻ってきたら雪はもちろんないし太陽は明るいし人間ってこんなにいるのかという驚きで不思議な気持ちになる。空気の乾燥に手指があっという間にささくれてうまく動かない。色んなことを考える。今年ももう終わる。