南と南、それから東

南と南、それから東

春の風の瑞々しさは、あたらしい果物を噛んだ時のそれに似ている。ほんの少し雪が降ったかと思えば、瞬く間に気温は上がり、そうかと思えば雹が降ってみたりもする。春はもうこの土地に戻ってきたのだけれど、まだ荷ほどきをせず、生きている者たちの様子を観察しているのかもしれない。強い風を吹かせ、時折はまた寒気のために道を開ける。二月の終わりにさえ、雪が降ったことはあったのだから。

ところで、今日が節分というのは人に聞くまで知らなかった。何がなんでも二月三日というわけではなく、立春の前日のみをそう呼ぶとは!

帰りがけにスーパーを覗くと、みんな恵方巻をカゴに入れていた。関東で恵方巻を食べるようになったのはここ十数年程度ではないだろうか。しかしそう考えてみると、イベントとしてすっかり定着したのだなあとも思う。いずれにしても献立に悩む必要がない夜というのは大変ありがたいものだ。それだけでも歳神の方を向いて、御礼を言いたくなるものである。

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4 years ago
TENETの円盤が届いていた。11月に予約した時は年明けなんてまだ先のことだと思っていたがあっという間だ。櫻井孝宏の吹替目当てに買ったと言っても過言ではない。まさかここで会えるとは思っていなかった。櫻井孝宏仕事し過ぎである。供給が多い。感謝。

TENETの円盤が届いていた。11月に予約した時は年明けなんてまだ先のことだと思っていたがあっという間だ。櫻井孝宏の吹替目当てに買ったと言っても過言ではない。まさかここで会えるとは思っていなかった。櫻井孝宏仕事し過ぎである。供給が多い。感謝。

TENETといえばマイケルケインの食事シーンが癒しと一部界隈で話題なわけだが、マイケルケイン主演のキングオブシーブスが来週公開だから楽しみだ。コメディな予告に反して案外笑えないという評を見て逆に期待している。


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4 years ago

一昨日本郷のあたりをぶらぶら歩いた。年始のためにまだ相当の店は閉まっていた。謹賀新年の貼り紙を幾度も見ながら坂を下りて白山通りに出ると、都心へ向かうにつれて結構な人出にあった。神保町で本を買おうと思ったがやめて戻り、また坂を上った。珈琲豆を買おうか迷ったが、出直すことにした。

昨日は「燃ゆる女の肖像」を見た。途中までは「面白いけど好きかと言われるとどうだろう」と思っていたけれど、ラスト十数分で完全にやられた。見る者と見られる者。両者はどこまでも対等だ。エロイーズは美しい愛を抱えたまま黄泉から戻らないことを選んだのだろう。それを死とは呼びたくないけれど、ひとつの終わりは悲しい。

帰りに皇居のあたりまで行ったら人は全然いなかった。鴨がゆったりと泳いでいる水にあかるい空が映っている。そのひらけた空気を吸って電車に乗った。

4 years ago

大家の話

親の家を出て最初に住んだ部屋は最上階に大家が住んでいる物件だった。自分で住んでいるくらいだから悪くはないところだろうというのがこちらの見立てだった。引っ越して最初の日、新茶を持って挨拶に行った。大家は私に「◯◯大学の学生か」と訊ねた。曰く、某教員と知り合いなのだと言う。その通り◯◯大の学生であった私は、果たしてその人の名を知っていた。しかし別にそれだけで、あとは二言、三言会話を交わして終わった。

大家に面倒をかけることはあまりなかったと思っている。一度台所の水道に重いものを落として派手に壊したことはあったが、それ以外はごく静かに暮らしていたと思う。思い出してみると入居の際も「学生だからといって騒がしくなければ良い」ということだけは念押しされたが、結局のところ、人を招くことも殆どなかった。

大家は小柄な高齢男性だった。七十だか八十だかよくわからないがまあその辺りだろうと思っていた。その年代にしては割合元気よく見えていたが、ある時から経鼻チューブをしてエレベーターを降りてくるところを見かけるようになった。「どこか悪いのだろうか」と思ったけれども、それを直接訊ねることもできなかった。

やがてそんな姿も見かけなくなり、ある日町内の看板に訃報が貼り出されているのを見て亡くなったことを知った。年齢は七十でも八十でもなく、九十を優に過ぎていたことも、同時に知ったのだった。

物件はその後大家の子どもが引き継ぐことになった。私はそれからすぐに引越しをしたので、あの建物が今どうなっているのかを知らない。

些事ながらこの思い出を私は忘れたことがないのだが、今になって無性に書き表してみたくなったのは、こういう日記をつけ始めたからかもしれない。私があの物件に入居し、また大家の訃報を見たのがちょうど今時分の時期だった。春が近づく夜の匂いをかぐたび、このことを思い出すのである。


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2 years ago
ローストビーフというかコールドビーフが食べたくなり料理。副菜のグリーンピースはBBCのサイトに載っていたものを作って添えてみた。

ローストビーフというかコールドビーフが食べたくなり料理。副菜のグリーンピースはBBCのサイトに載っていたものを作って添えてみた。


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2 years ago
今朝はベランダの掃除をして、冬服をクリーニングに持っていった。レモンシロップはいい感じに仕上がっている。

今朝はベランダの掃除をして、冬服をクリーニングに持っていった。レモンシロップはいい感じに仕上がっている。


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2 years ago

半年ぶりの金沢は雪のしんと冷たい街をたくさんの人で賑わっていてとても良かった。裏日本の実際はなんといっても冬にある。水分の多い雪が延々と降っては積り、積もっては緩んで凍る。鬱々とした曇天が続く。それに加えて金沢という都市は天候が目まぐるしく変わりすぎるのが面白い。新潟と金沢はよく比較の題材にされるが、金沢に比べれば新潟はもう少し天候がいいと思うし、城下町と新興の平野ではそもそもの地盤が似ていない。それでも空気感のようなものは似ている。あと金沢には大和があるのが新潟市民的に郷愁を誘う(富山にもあるらしいが)。

東京に戻ってきたら雪はもちろんないし太陽は明るいし人間ってこんなにいるのかという驚きで不思議な気持ちになる。空気の乾燥に手指があっという間にささくれてうまく動かない。色んなことを考える。今年ももう終わる。

3 years ago
夏場の花の管理は難しい

夏場の花の管理は難しい


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3 years ago
こちらのnoteを読んで始めてみた。一日一枚撮って貼るだけなので簡単である。何はなくともとにかく一枚撮らなくてはならない、というのも結構楽しい。絵的には地味でもチェキならなんとなくいい感じになる(気がする)のもありがたい。
ほぼ日手帳xチェキでつくる、写真日記のススメ|Ryo Kanno|note
note(ノート)
Instax sq10というチェキの進化版を購入し、日々飲み会や、休日に持ち出している。 せっかくなので、手帳にチェキの写真を貼っていこうか、というアイデアを思い付いた。 今日は、そう考えるようになった経緯と、試行錯誤の足跡を書き残しておく。 目次・Momentの積み

こちらのnoteを読んで始めてみた。一日一枚撮って貼るだけなので簡単である。何はなくともとにかく一枚撮らなくてはならない、というのも結構楽しい。絵的には地味でもチェキならなんとなくいい感じになる(気がする)のもありがたい。

挟んである写真は相田諒二さんのポストカード。季節が変わればまた違う写真にする。


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  • iktsarpok
    iktsarpok liked this · 4 years ago
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um1aut - 月刊地獄めぐり
月刊地獄めぐり

ゾンビよ、朝には死んだように眠れ

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