上りエスカレーターのステップに引かれた黄色い線が延々と繰り返されてレターパットみたいな顔をしているのを見て、この機械を上っている時我々は背後に向かって無意識に何かを物語っているのかもしれない、と思う。一段ごとに誰かの一人ずつ違う物語が、発生しては粛々と進みやがて機械室に巻き取られて消え、素知らぬ顔で下から出てきては新しい誰かの物語を語る。上り切れば散り散りになって再び集まることのない我々の。
トマト缶と玉ねぎと豚肉だけのカレーを作った。キャベツとじゃがいものサブジを合わせて、全部を一混ぜして食べる。ビースターズを読み始めた。漫画はレンタルで読みたいと思いつつ、結局は買い揃えている。
電源の落ちたスマホの液晶に部屋の中が映り込んでいるのを見て、乾くことのない水溜りのようだなと思う。先日、亡くなった祖父の夢を見た。通夜の番をしている時に近い内容だった。スマホの暗い画面を見て思い出したのは何故だかそのことだった。こういう沈黙は、自分の心象の反射を認めているに過ぎない。
月曜から結構疲れている。昨日の夕飯は茄子の揚げ浸しとブロッコリー胡麻和え、青椒肉絲と甘酒の味噌汁を作った。さらに玄米を混ぜたご飯と、薄く作ったレモンサワー付き。これは外で食べたら2000円くらいするだろうなと自画自賛した。
副菜をいくつか作っておくと食事の支度が簡単でいい。料理は基本的に面倒でやりたくはない。何もなければ胡瓜でも齧っておけばいいくらいなのだが、時々作ることが妙に楽しい日がある。今日、茄子がまだ余っていたので味噌炒めにして、鶏を蒸して裂いておいた。二品。これ以上はやめておく。こういうことは疲れ果てるまでやっても仕方がないのだ。
昼から予定があったので午前中は在宅した。なんとなく思い立ってキッシュを作る。タルト生地を作るのは面倒だったので冷凍のパイシートを使った。具を炒めるのも面倒だったのでレンジで加熱したものをそのまま入れた。それでも大体いいように出来る。だけどまあ、次回はきちんとタルト地を焼こう。
もう8日であるし、七草も入っていない。昔から柔らかい御飯が大嫌いで、粥というものを食べられるようになったのはだいぶ最近になってからだ。それも中華粥の濃い味を食べてようやく抵抗がなくなったという次第である。中華粥!角煮と搾菜を添えた中華粥を食べたい。今はコーヒーを飲んでいる。
地下鉄のエスカレーターに貼ってある注意喚起のピクトグラムをなんとなく眺めていた。大人と子どもが並んでエスカレーターに乗っている図。各配色は、注視すべき子どもが赤色、保護者とエスカレーターが青色、エスカレーターの安全ラインが黄色(これは実物通りか)となっている。良いデザインは直感的で実用的だ。
もし非常口のピクトグラムが緑色ではなく赤色だったら不安感を与えるのだろうなとホームに立って考える。こういう感覚は、緑はgo、赤はstop、黄色はcautionを示す信号機を連想するからか(それが全てではないにしろ)。そう言えばなぜ青信号はそのカラーであるところの緑信号と呼ばずに青信号と呼ぶのだろうと疑問を持つ。検索すると解説をしているサイトが色々出てきて面白い。電車を待つあいだ。
昨日から久しぶりにLOTRを見ている。まだ「旅の仲間」の中盤。序盤、エルロンドの館で九人の旅の仲間が決まる場面のやりとり(私は弓で戦おう!とか宣言して加わる)がいかにも民話的でいい。昔見た時は話についていくのに必死で好きなキャラクターにまで思い至ることがなかったのだが、今回はあちこちに視線が飛ぶ。特にガンダルフとサルマンという二人の存在と、対立する構図がとてもいい。他の作品でも、主人公の仲間が自分と同じ属性を持つ敵と一対一で戦うシーンが大好きなのだが、この二人においては「シニア名優対決」という点でも非常に熱いものがある。
勇気と情熱のガンダルフ、理性の果てに狂気的な冷酷さで悪に染まったサルマン。この二人の対立にどんな形で決着がつくのかは忘れてしまった。旅の終わりを再び見届けるのが楽しみだ。